※息抜きネタ。
音楽制作において実在しない言語(=架空言語)による歌詞を使うことがあります。
何も考えずテキトーに音を並べるだけでできないこともないですがこだわる人は文法体系も矛盾なく組まれた言語を使いたい人もいます。
架空言語のアプローチは主にこんな感じになっていると思います。
・完全なるテキトー
・実在の言語の音素差し替え
・音素体系文法体系に整合性のあるオリジナル言語
などなど。
今回は音素体系文法体系に整合性のあるオリジナル言語を考えてみます。
ここで考えるポイントは
・UTAUとの親和性
・音としての美しさ
・文法の論理性と簡便さ
・言語学的無標性有標性
です。
【UTAUとの親和性】
UTAUには技術の面で言語の好き嫌いがあります。
CVCの形が現れる言語(=シラブル言語)、多重子音、多重母音が苦手と言われることが多い印象です。
つまりUTAUとの親和性が高いのは
・CVとVの形がほとんどの言語(=モーラ言語)
・多重子音、多重母音がない
言語。世界的にはかなり珍しい。
音源収録の点では音素が少ないと楽なのでこれも要素に加えてもいいかもしれません。
【音としての美しさ】
音楽として使う以上音を汚くする理由はありません。
が、「美しさ」は評価が難しいのが問題。
中国語的音素が美しいと思う人と英語的音素が美しいと思う人はいて、結構方向性が違います。
好みで。
ただし、二重子音や二重母音、VC音素が美しいと思う場合「UTAUとの親和性」の項目と正面衝突するのでそのあたりは調整が必要になるでしょう。
【文法の論理性と簡便さ】
架空言語の文法は一般にどこかの言語の文法体系をベースにして、簡単にしていくことが多いです。
例外が少なく論理性が高いとPCでの処理が簡単でプラグインが作りやすくなります。論理性は評価も可能です。
簡単さは評価が難しいですがよく言われる簡単な言語の特徴は
・例外がない
・格変化がない
・時制がない
など。日本語人的に時制がないのはわかりにくいかもしれませんが、過去形がなくても事が起こった時間を明示すれば過去であることがわかります。
「昨日」って言ったら過去なのです。
ただ、格変化したときの母音の変化が音の美しさと関係したりすることもあって個々も要調整かもしれません。
文法を簡易なものにすると書くのは簡単で読解が難しいということになりやすかったりします。
【言語学的無標性有標性】
これは完全なるオプションです。気にする必要はありませんが一つの指標になります。
無標=一般的
有標=特殊
という理解を前提に
・母音は5個で、「a, i, u, e, o」が無標
・語順はSOV型が無標
など。こだわりがない項目を無標にすると汎用性が高まります。
ただし、使用人口の多い中国語や英語はかなり有標な言語なので悩ましいのです。
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くろ州の合成音声備忘録
母音は主に口腔の広さ、口の中での舌の位置、唇の形で決まります。
例えば日本語の「う」は
口腔は狭目
舌の位置は奥
唇は円形にしない
という発音です。これらをまとめて「非円唇後舌狭母音」と言ったりします。
これを図示するとこうなります。
こう! pic.twitter.com/Mf7S5i2p5I
— くろ州=マッドサイエンティスト (@96s_kM4osM) 2017年10月11日
上に行くにつれて狭く
左に行くにつれて前に
なるように記述する図になります。
というだけのお話。
くろ州の合成音声備忘録
【子音性と母音性】
任意の音素が子音っぽいか母音っぽいかというのは狭窄の量で判断します。
例えば
「あ」声帯から口を出るまで口の中で狭まっているところがほぼない→母音性が高い
「t」歯茎と舌で空気がまったく流れないレベルまで狭める→子音性が高い
で、「い」「う」です。
それぞれ母音の中では「狭母音」であって狭窄が強め。よって子音性の高い母音と言えます。
【無声化】
無声子音の行の「い」段と「う」段は母音が声にならないことが多いです。これを無声化と言います。
正確には「ほとんど有声音になってない」状態なので無声音が鳴っていたり、子音が母音の影響を受けて変化していたりします。
「い」段と「う」段は子音性が高いので無声化しやすいですが、実は「い」段と「う」段以外でも無声化はおきます。
「早口になった結果有声音が鳴るだけの長さの発音ができず結果的に無声音になる」
という場合。
UTAUではごくまれにみる表現「潰れたさ行」がこれにあたると思われます。
【脱落】
母音が弱くなった結果無声音すら鳴らず、子音が完全に連続する場合は脱落と言います。
完全に脱落するので周囲の子音が本来あったはずの母音に影響されて変化することもありません。
ということを先生に訊きました。