PiaproStudioというのは、基本的にDAW上で動くプラグインタイプの歌声合成ソフトです。作曲をするユーザーはこのプラグインタイプが好きな傾向が強い気がするんですが(DAW上で動くので他の楽器をいじるのと同じレイヤーで作業できるため)、それ以外のユーザーからすると「DAWをかまさないといけなくて難しい/めんどい」という理由で嫌厭されがち。
PiaproStudioはクリプトンボカロに付属していて、「最安でボカロ触るならPiaproStudioを触らない手はない」ようになっているので、難しかろうがめんどかろうが触らないといけないけども。
そんなこんなで、一部のボカロユーザーはPiaproStudioの単独起動版(=スタンドアローン)を欲しがっていたわけですが、今から約2年前にそれが登場したのです。PiaproStudioスタンドアローン。
数年単位で話題に乗り遅れていますが、この度スタンドアローン版を手に入れたのでレビューします。
【PiaproStudioスタンドアローン】
正確には「piapro studio Standalone」。初音ミクの中国語音源「初音ミク V4 CHINESE」にのみ同梱されています。つまり、初音ミクの中国語音源を買わないと手に入らないというわけですね。日本からなら、クリプトンの「SONICWIRE」からダウンロード版を買うのが一番簡単かな? V4C自体は1万円なので、初音ミクのライブラリの中では安いほう。ただ、日本人は普通V4C買わないよね。私は普通じゃないから買うけど。
というわけで、V4Cを買って、もろもろインストールして使ってみよう。
【プラグイン版PiaproStudioユーザー的な視点】
基本的に操作自体はほぼ変わらない。触っててちょっと気になった違いは3点くらい。一つは「リージョンを描かない」というところ。以下、めんどいのでプラグイン版をP版、スタンドアローン版をS版と呼ぶことにする。P波とS波みたいになってるけど気にしないこと。
P版では、ノートを描く前に「リージョン」を描く必要がある。ノートを置くための皿みたいなものだ。VOCALOID Editorでいうところの「パート」のこと。S版ではそもそもリージョンを描くことができない。直接ノートを置けばいいだけ。慣れるのにちょっと時間がかかるかもしれないが、これは別に良くも悪くもない。その仕様変更要る?って感じ。リージョンのカットや削除、ミュートなんかは普通にできる。
二つ目は「リバーブがついている」ということ。P版はDAW上で動くので、リバーブなんてのは機能として必要ない。DAW側に任せればいい。S版は右下の「AMBIENCE」ボタンを押すと、リバーブがかかる。結構深め。逆にかけられるエフェクトはリバーブのみ。基本的には書き出した後にDAWでMIXすることを想定しているのかな?
三つ目は「オーディオトラックがある」こと。これもスタンドアローンだからこその違い。P版はDAW上で動くので、オケやブレスは別トラックで扱えばいい。S版は別のトラックなんてのはないので、エディター内でオケやブレスを扱うことになる。これはVOCALOID Editor(スタンドアローン)と同じ仕様だといえる。
【中国語音源ユーザー的な視点】
中国語はピンインで入力する。漢字入力に対応していないのはVOCALOID Editorと変わらない。そういう細かいところは別に変らんのでいいんだが、とりあえず「初音ミク V4 CHINESE」しか歌わせられないというところがでかいんだな。S版で読み込めるのはV4Cだけ。ほかの中国語音源やその他の言語の音源は一切読み込み不可。これはでかい。俺はミクV4C以外には興味ねぇという方なら、特に問題はないかも。
でも、これ何が問題かというと「ほかの中国ボカロで作ったVSQXが使いまわせない」ということなんだな。もちろん、S版デモVSQXは読み込めるし、V4C自体にはほかの中国ボカロ用に作ったVSQXで歌う能力はあるんだが、S版には「歌手を変更する」機能がなくて(私だけのバグ?)、洛天依で作ったVSQXを読み込んで歌わせようとすると「歌手変更しないと歌わないのに歌手変更できない」ということになる。結果、VOCALOID EditorやP版でミクV4Cに歌手変更してから読み込むという無駄ムーブをかますことになる。それだったらEditorかP版使うくない?
そもそもS版を使う人ってどういう人なのかと考えてみよう。プラグインタイプが好きな人ならP版を使うだろうし、ほかの音源をすでに持っててVOCALOID Editor持ってる人なら慣れてるEditorを使うよね。となると、S版使う人は「P版で挫折したクリプトンボカロユーザー」か「VOCALOID Editor for Cubaseで挫折したCubaseユーザー」だろう。
この人たちはEditor持ってなくてプラグインタイプが苦手なので「それだったらEditorかP版使うくない?」に対しては「できればやりたくない/できない」派なんだろう。歌手変更だけならまだ許せるのかも。
【ミクユーザー的な視点】
ミクV4XやV4EとV4Cを併用したい場面がどのくらいあるかは不明だが、とりあえず、S版ではV4Cしか読み込めないので、併用するなら絶対にP版を使うことになる。使い分ける必要性は多分感じないだろうので、結局P版しか使わないという未来が見える。
【結果】
PiaproStudioスタンドアローンは「プラグインタイプの歌声合成が苦手な、中国語ミク単推し専用」歌声合成みたいなものだと私は理解した。とりあえず「スタンドアローンのPiaproStudioが欲しい」という理由なら、買っても何も起きないので注意。
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